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外国人は日本で働きたいと思うのか…国際的な「外国人争奪戦」が激しく展開されている現実

国際的な「外国人争奪戦」が激しく展開されている

これだけでは新規入国者が減ったのに就業者が増えた説明にはならないが、背景には本来ならば母国に戻ったり、別の国に働き口を求めて移動したりしたはずの外国人労働者が、そのまま日本に残っていたことがある。

コロナ禍により母国などで入国制限がかかり、思うように出国できなかったのだ。そうした状況下で、人手不足企業の採用熱が高まったこともあり、コロナ前よりも就業する外国人が多くなったのである。

3年間の実習期間を終えた技能実習生の中で、最長2年間延長できる在留資格「技能実習3号」の取得の動きが広がっている。海外から来た人ではなく、感染拡大で帰国できなかった技能実習生が「特定技能」の在留資格に切り替えて、働き続けているのである。

技能実習制度は1年目の在留資格が「技能実習1号」、2~3年目が「同2号」で、「同3号」は2号までの実習を修了した後に、技能検定試験に合格するなどで取得できて、比較的取得しやすいとされる。2号や3号の修了者が移行できる「特定技能」の資格者は、2021年2月末時点で2万386人となり、前年同期比で7倍近い水準となった。

コロナ禍にあって母国に戻りたくても戻れないという、あるいは慣れた職場環境で少しでも長く働きたいという外国人労働者側の事情やニーズと、新規の実習生の来日が不透明な状況下で、気心の知れた人を雇い続けたいという企業側の思惑とが一致しているのであろう。「コロナ禍でいつ新しい実習生が来るのか目途が立たない。それよりも日本国内にいる実習生が3号に移行するほうが、雇う側にとっても雇われる外国人にとってもメリットがある」という本音も聞かれた。

コロナ禍をめぐって外国人旅行者と外国人労働者は明暗を分けた形となったが、外国人労働者についても2020年はたまたま大きな下落が見られなかっただけと受け止めたほうがよい。外国人の受け入れが“水もの”であることには変わりがない。

そもそも外国人労働者は、「コロナ前」から毎年、安定的に来日し続ける保証などなかった。日本と同じく少子高齢化に悩んでいる近隣諸国が少なくないからだ。いずれの国も外国人労働者に頼っており、国際的な“外国人争奪戦”が激しく展開されている。

加えて、送り出し国の経済発展やコンピュータの普及が、外国人の来日を不確実にしている。グローバルに事業展開する企業は、人件費の安い開発途上国に高度なコンピュータで管理された工場を建設するようになった。こうした工場では、ほぼすべてをオートメーションで製造するため、そこで働く人たちに製品製造に関する熟練性は必要とされない。

すなわち、外国人労働者の送り出し国内で良質な雇用が続々と創出されているということである。いまや言葉の通じない極東の島国に多額の渡航費を支払ってまで働きに行くメリットが薄れてきているのである。

加えて、コロナ禍によって人の往来が困難になった結果、多くの国で人手不足が広がったことである。コロナ不況から回復する国が増えるにつれて、思うように買い物や旅行に行けなかった人々のたまりにたまった繰越需要が噴き出すことが予想される。すなわち、短期的とはいえ世界中に働き口がたくさんできるということだ。

そうでなくとも日本の賃金水準は低過ぎる。日本のコロナ不況からの脱却が遅れたならば、外国人労働者が一気に他国へと流れることにもなりかねない。

パンデミックに限らず、外国人が突如として激減する状況はいつでも起こり得る。送り出し国と日本との間で外交上の摩擦が生じても、人の流れは突然ストップするだろう。

人口減少に伴う国内マーケットの縮小や人手不足を手っ取り早く外国人で帳尻合わせしようという発想の危うさを、コロナ禍が浮き彫りにした。外国人に依存する政策は、いつも「不確実さ」と隣り合わせなのである。

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